フランスで死者と結婚するということ

「死んだ人と結婚できるの?」——驚く人も多いだろうが、実はフランスでは、特別な条件下でそれが認められている。これは単なる都市伝説ではなく、フランスの民法第171条に基づく正式な制度だ。

この制度によれば、将来結婚する予定だった相手が亡くなった場合、大統領の許可により、死後に婚姻を成立させることができる。ただし、「重大な理由」と、亡くなった側が結婚を確実に望んでいたという証拠が必要になる。たとえば、婚約者が戦地で急死し、婚姻届は準備中だったというようなケースだ。

実際にこのような許可が下りるのは非常にまれだが、過去には第二次世界大戦中の兵士の遺族が、名誉回復や遺産相続のため申請し、認められた事例もある。そして、認められた場合、婚姻の効力は亡くなった日の前日に遡って発生するため、法律的には「生前結婚していた」ことになるのだ。

この制度の背景には、フランスが個人の尊厳や感情を法的に守ろうとする姿勢がある。単なる手続きではなく、「愛する人との約束」を国が尊重する一形ともいえるだろう。

もちろん、現代ではほとんど使われない規定だが、法律が人間の感情に寄り添うことができる一例として、今も語り継がれている。

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