「ホンダ」はもはや国名? ベトナムで生まれた意外な呼び名
ベトナムを訪れたことがある人なら、誰もが驚くことがある。「バイクを貸して」と言うと、現地の人たちは「ホンダを借りるの?」と返してくるのだ。
実は、1980年代から1990年代にかけて、ベトナムでは二輪車の9割近くがホンダの「スーパーカブ」シリーズだった。農村部から都市まで、人々の暮らしに欠かせない移動手段として、スーパーカブは一家に一台の“生活必需品”となった。
やがて、その存在感の強さから、「ホンダ=バイク」という認識が広がっていった。スクーターも、オートバイも、メーカーがヤマハやスズキでも、現地の人たちはすべて「ホンダ」と呼ぶようになったのだ。
「ホンダ」という言葉は、もはや単なるブランド名を超え、ベトナム語にすら組み込まれた日常語になった。 今では道端の整備屋も「ホンダの修理」と称し、保険の手続きでも「ホンダ」と言えば通じる。実際には違うメーカーの車でも、現地の人にとっては「バイク=ホンダ」なのである。この現象は、企業の影響力が文化にまで浸透した稀有な例だ。ホンダはベトナムの交通インフラを形作り、結果として言語まで変えてしまった。技術の普及が、人々の暮らしや表現にまで深く根を下ろす——それは、機械の話ではなく、人と社会の物語だ。
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