江戸時代の日本人の身長は?歴史的背景から読み解く体格の真実(前編)

私たちが現代の日常生活で目にする日本人の平均身長は、男性でおよそ170センチメートル前後、女性でおよそ158センチメートル前後となっています。電車のつり革、洋服のサイズ、あるいは街で見かける人々の姿は、この数値がごく標準的なものとして私たちの前提に組み込まれています。

しかし、時代を大きく巻き戻して江戸時代に目を向けてみると、当時の人々の体格は現在とはまったく異なっていました。驚くべきことに、江戸時代の日本人の平均身長は、過去の歴史のなかでも最も低い水準だったことが近年の研究や発掘調査によって明らかになっています。

今回は、江戸時代の人々の身長にスポットを当て、当時の驚きの数値や、なぜそこまで小柄だったのかという理由について詳しく紐解いていきましょう。

1. 驚きの数字:江戸庶民の平均身長とは?

歴史上の各時代における日本人の平均身長を比較すると、意外な変遷が見えてきます。縄文時代や古墳時代などと比較しても、江戸時代の人々は総じて小柄でした。

当時の江戸庶民の平均身長は、おおむね以下のような数値であったと推定されています。

  • 男性の平均身長:約155センチメートル ~ 156センチメートル

  • 女性の平均身長:約143センチメートル ~ 145センチメートル

現代の感覚からすると、男性であっても160センチメートルに満たず、女性は140センチメートル台前半という数値は、かなり小柄に感じられるはずです。現代の高校生や中学生の平均身長と比較しても、大きく下回る水準です。

当時残された古文書の記述や、発掘された人骨(骨格の長さ)を基にした復元によって、この数値の信憑性は裏付けられています。時代劇や映画などで見る江戸の町人たちが、もし現代にタイムトラベルしてきたとしたら、私たちはそのコンパクトな体格に少し驚くことでしょう。

2. なぜ江戸時代の人は背が低かったのか?

これほどまでに日本人の身長が低くなった背景には、江戸時代特有のライフスタイル、食文化、そして社会構造が深く関係していました。主な要因としては、以下のような点が挙げられます。

  • 動物性タンパク質の不足 仏教の影響や「肉食禁止令」などの名残もあり、当時は牛や馬などの四つ足の動物の肉を日常的に食べる習慣がほとんどありませんでした。基本の食事は、玄米や白米などの穀物を中心に、野菜や味噌汁、そして時折の魚介類がメインでした。成長期に不可欠なタンパク質や脂質が圧倒的に不足していたことが、骨の成長を妨げた最大の原因と考えられています。

  • 衛生環境と感染症の蔓延 人口が密集していた江戸などの大都市では、現代のような下水道設備が整っていませんでした。井戸水が汚染されやすかったり、長屋暮らしにおける衛生管理の難しさから、乳幼児期や成長期に下痢や感染症にかかる子どもが後を絶ちませんでした。病気によって栄養が十分に吸収されないことが、発育不良に直結していました。

  • 重労働とエネルギー消費 庶民は日々の生活を維持するために、朝から晩まで大変な肉体労働に従事していました。摂取するカロリー(栄養素)に対して消費するエネルギーが大きすぎたため、身体を大きく成長させるための余力が残らなかったという側面もあります。

江戸時代の人々の暮らしや、当時のエリート層・武士たちの体格事情(実は将軍のなかにも驚くほど小柄な人物がいました)については、後編でさらに深く掘り下げていきます。

歴史的な背景を知ることで、私たちが普段何気なく口にしている食事や、恵まれた衛生環境のありがたさがより鮮明に見えてきますね。