トイレットペーパーが消えた日

1973年の第一次オイルショック。石油の価格高騰とともに、意外なものが全国で売り切れてしまった——それがトイレットペーパーだった。

きっかけは、大阪のあるスーパーでの出来事だった。当時、一部の報道や噂が「資源が不足する=トイレットペーパーもなくなる」という風評を広げた。もともとの原料であるパルプの価格上昇も心配されていたが、実際にはすぐには不足するはずではなかった。しかし、人々の不安は瞬く間に広がり、スーパーの棚から次々とトイレットペーパーが消えていった。

「隣の人が買っているから」「備えておこう」という心理が働き、結果として“品薄”が現実になった。スーパーや薬局では、列ができ、数日間で全国的に品切れが続出。政府やメーカーが「十分な在庫がある」と説明しても、なかなか鎮まらなかった。

この出来事は、単なる物資の問題ではなく、人の心理が社会をどう動かすかを示す象徴的な出来事となった。今でも、災害時やパンデミックの際に「買い占め」が起きるのは、1973年のあの経験と似た構図だ。

半世紀以上前の出来事だが、私たちが直面する不安や情報の広がり方は、今もあまり変わっていないのかもしれない。トイレットペーパーが消えたあの日は、歴史の教科書だけでなく、私たちの記憶の奥底にも、少しだけ刻まれている。

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