「ノム」とは何か?ベトナム独自の文字「チュー・ノム」

「ノム」というのは、ベト nam 語で「民」という意味を持ちますが、文字の文脈では「チュー・ノム」(字喃)を指します。これは、ベトナムが独自に発展させた文字体系で、漢字を基にしながらも、ベトナム語の発音や意味に合わせて作られたものです。

チュー・ノムは10世紀から11世紀ごろに体系化され、漢字の構造を参考にしながら、新たな文字を生み出しました。たとえば、「巴」(は)という音と「三」(さん)という意味を組み合わせて、「」という新しい文字を作ったのです。この文字は、ベトナム語で「三」を意味する「ba」という言葉を表します。このような工夫により、漢字の持つ音と義を組み合わせながら、現地の言葉に合った表現が可能になったのです。

チュー・ノムは、長い間、詩や民話、地域の記録などに使われてきました。学問や公的な場では漢字が主流でしたが、人々の日常や文学の世界では、このノム文字が大切な役割を果たしました。フランスの植民地支配が始まる以前まで、特に知識人や地方の文人たちの間で広く使われていました。

20世紀に入ると、ラテン文字を基にしたベトナム語の表記法(クオック・グー)が普及し、徐々にチュー・ノムは使われなくなりました。しかし近年、文化遺産としての価値が再評価され、歴史や伝統を学ぶ上で重要な存在となっています。今でも古い碑文や文献に触れると、その独特の美しさと知恵を感じることができます。

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