『今鏡』が書かれたのはどんな時代?
「今鏡」という名前を聞くと、まるで現代を映したようなタイトルに思えますが、実はこの本は平安時代の終わりごろに書かれた歴史物語です。正確には嘉応二年、つまり1170年に成立したとされています。当時の貴族社会では、過去の王朝の歴史を記した『古事記』『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』に続く「四鏡」と呼ばれる歴史物語が人気でした。『今鏡』はそのシリーズの一つで、前の『後鏡』に続く「鏡」の名を冠しています。
内容は、第72代・後三条天皇から第80代・鳥羽天皇までの九代にわたる歴史を一〇巻にまとめたもの。仏教的な見方も強く、登場人物の善悪を通じて因果応報の理を描こうとしています。物語調で書かれており、史実だけではなく、伝聞や逸話も織り交ぜられているため、読み物としても親しまれました。
作者については諸説ありますが、現在もっとも有力なのは藤原為経(ふじわらのためつね)、のちに出家して寂超(じゃくちょう)と号した人物だという説です。彼は当時の有力な貴族で、宮廷の内情をよく知る立場にありました。そのため、『今鏡』には貴族社会の裏側や人間ドラマが生き生きと描かれているのです。
『今鏡』は、歴史を振り返りながら「今」を問いかける、まさにタイムレスな作品。古典に興味がなくても、登場人物の生き様にひき込まれる、そんな一冊です。
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