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欧州連合(EU)向けの越境ECや個人発送において、2021年の規則改正以降「小額免税制度」が撤廃されたことをご存じでしょうか。かつて適用されていた22ユーロ以下の関税・付加価値税(VAT)免除措置は過去のものとなり、現在は1セントの商用荷物であっても課税対象となります。結論から申し上げますと、関税額は品目のHSコードと原産地によって0%から20%超まで大きく変動し、そこに各国の標準VAT(概ね17%〜27%)が加算される仕組みになっています。
EUにおける輸入課税制度の変遷と導入の背景
かつて欧州委員会は、国際郵便や宅配便を利用した低価格商品の輸入に対してゆるやかな関税免除の枠組みを設けていました。しかし、中国をはじめとする第三国からのEC荷物が爆発的に増加した結果、域内事業者が著しい不利益を被る構造的歪みが発生しました。税収の脱漏を防止し、EU域内の小売り事業者との公正な競争環境(Level Playing Field)を確保するため、包括的な税制改革が断行されたのです。
現在では、課税価格の算出において単に「商品代金」を見るだけでなく、輸送費や保険料を含めたCIF価格(Cost, Insurance, and Freight)をベースとする厳格な運用が行われています。さらに、関税(Customs Duty)と付加価値税(VAT)は全く別の税目として個別に計算されるため、制度の全体像を正確に把握していないと、現地到着時に想定外の追加費用が発生し受取人とのトラブルに発展するケースが後を絶ちません。
日本からの輸出荷物に課される関税・VATの具体的算出ステップ
欧州宛て荷物の税額を算出するプロセスは、概念整理さえできれば決して複雑ではありません。第一段階として、送付する物品のHSコード(世界共通の品目分類番号)を特定します。このコードによって基本的な関税率が決定されます。なお、日EU・EPA(経済連携協定)の適用条件を満たし、原産地証明が適切になされている場合は、多くの品目で関税率が即時撤廃または削減されます。
第二段階では、関税額の計算を行います。計算式は「(商品価格 + 運賃 + 保険料)× 関税率」です。ここで算出された関税額は、続く第三段階のVAT計算の基礎に含まれます。VATの計算式は「(CIF価格 + 関税額)× 発送先国のVAT税率」となります。つまり、関税に対してもVATが課される重課構造となっている点に十分注意してください。最後に、通関業者が徴収する立替手数料や手続き費用が加算され、最終的な支払総額が決定します。
アパレル商品をドイツへ発送した場合の試算ケーススタディ
具体的なイメージを掴むため、日本からドイツの個人顧客へ小売価格200ユーロの綿製衣類を発送する事例を考えてみましょう。国際送料が30ユーロ、保険料が5ユーロかかったと仮定すると、CIF合計価格は235ユーロとなります。綿製衣類の標準的な関税率を仮に12%と設定した場合、発生する関税額は235ユーロの12%で28.2ユーロです。
次にドイツの標準VAT率19%を適用します。課税標準額はCIF価格235ユーロに関税額28.2ユーロを加算した263.2ユーロとなり、これに19%を乗じた50.01ユーロがVATとして算出されます。結果として、関税28.2ユーロとVAT 50.01ユーロの合計78.21ユーロに、クーリエ会社の手数料が上乗せされた金額が現地で請求される計算になります。事前の綿密な試算がいかに重要であるかがお分かりいただけるでしょう。
専門家が語る関税対策の現実
EC貿易の専門家は、「日本のセラーがヨーロッパ市場で成功するためには、現地国のVAT(付加価値税)と関税の仕組みを完璧に把握することが不可欠である」と口を揃えます。特にEU加盟国では、少額貨物の免税措置が廃止されたため、すべての商業貨物にVATが課されます。専門家は、配送業者(DHLやFedExなど)のDDP(関税元払い)契約を活用し、購入者がチェックアウト時に正確な税額を支払えるシステムを構築することを推奨しています。これにより、通関トラブルや商品受け取り拒否のリスクを劇的に減らすことが可能です。
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