結論から申し上げます。韓国籍の方が亡くなった場合、相続人が誰になるかは原則として「韓国の民法」によって決定されます。日本に住んでいるから日本の法律が適用されるわけではありません。配偶者と子供が基本となりますが、韓国独自の「代襲相続」の範囲や、直系尊属が関わる順位などは日本法と明確に異なります。まずはこの準拠法の壁を正しく認識することが、紛争を避けるための第一歩となります。

法の適用に関する通則法と韓国民法の絶対的な支配力

日本国内で不動産や預貯金を所有していたとしても、被相続人が韓国国籍である以上、日本の「法の適用に関する通則法」第36条に基づき、相続の効力は被相続人の本国法に従います。ここで実務家を悩ませるのは、韓国民法が辿ってきた独自の変遷です。1960年の施行以来、幾度もの改正を経て、現在の相続順位や遺留分の考え方が確立されました。

特に注視すべきは、日本法では馴染みの薄い「慣習法」の名残や、戸主制廃止に伴う法的構成の変化です。かつての「旧慣」が現在の解釈に影を落とすケースも少なくありません。在日韓国人の方々の相続においては、本国の家族関係登録簿(旧戸籍)の記載と、日本での外国人登録や住民票の記載が一致しないという、極めて「厄介な」事態が常態化しています。これを紐解くには、単なる条文の暗記ではなく、歴史的背景を汲み取った高度な法的リーディングが求められます。

相続順位の決定打:日本法との決定的かつ微妙な差異

韓国民法における相続順位は、第1順位が直系卑属(子・孫)、第2順位が直系尊属(父母・祖父母)、第3順位が兄弟姉妹、そして第4順位が4

韓国相続で直面しやすい落とし穴と専門家のアドバイス

韓国籍の相続手続きにおいて、最も多くの人が躓くポイントは「家族関係登録簿」と日本の戸籍謄本の不一致です。特に日本で生まれ育った特別永住者の方などは、日本の役所に届け出た氏名や生年月日が、韓国本国の登録簿と微妙に異なっているケースが少なくありません。このわずかな差異が原因で、同一人物であることの証明(同一人証明)を求められ、手続きが数ヶ月単位で停滞することがあります。

また、相続放棄の期限にも注意が必要です。韓国法でも日本と同様に「相続開始を知った日から3ヶ月以内」というルールがありますが、日韓両国に資産がある場合、どちらの法律が優先されるか、あるいは両方で手続きが必要かという判断を誤ると、予期せぬ負債を継承するリスクがあります。「翻訳文書の公証」や「アポスティーユ」の取得など、国際相続特有の手順を早めに把握し、日韓双方の法務に精通した司法書士や弁護士へ相談することが、スムーズな解決への最短ルートです。

よくある質問(FAQ)

Q1:韓国に住んでいる親族と連絡が取れない場合はどうすればよいですか?

韓国の家庭法院(家庭裁判所)に対して不在者財産管理人の選任申立てを行う、あるいは遺産分割協議に代わる裁判手続きを検討する必要があります。韓国の「家族関係証明書」を取得すれば、会ったことのない相続人の存在が判明することもあるため、まずは正確な相続人の確定を優先してください。

Q2:日本にある不動産だけを相続する場合でも韓国法が適用されますか?

はい、原則として被相続人(亡くなった方)が韓国籍であれば、法の適用に関する通則法に基づき、相続権の範囲や順位については韓国の民法が適用されます。ただし、登記手続き自体は日本の法務局で行うため、韓国から取り寄せた書類に日本語訳を添付して提出する必要があります。

Q3:韓国の相続税についても日本で支払う必要がありますか?

日本居住者の場合、全世界の資産が日本の相続税対象となります。韓国にある資産について韓国で相続税を納めた場合は、外国税額控除を適用することで、日韓での二重課税を回避できる可能性があります。税務申告は非常に複雑なため、国際税務に強い税理士への確認が不可欠です。

エディターズ・ベリディクト(編集部の見解)

韓国籍の相続は、単なる手続きの延長ではなく、「家族の歴史を紐解く作業」でもあります。古い除籍謄本を辿る中で、知らなかった先祖のルーツに触れることも少なくありません。法律の壁は厚く感じるかもしれませんが、一つずつ書類を揃えれば必ず解決できます。複雑な国際情勢や法改正も影響するため、独力で抱え込まず、プロの知恵を借りながら大切に手続きを進めていただくことを強く推奨します。