世界でただ一つの「タバコがない国」ブータン

禁煙が厳しい国といえば、多くの人がヨーロッパ諸国を思い浮かべるかもしれません。しかし、実は世界でただ一つ、完全な禁煙国家があるのです。それはアジアの小さな仏教国、ブータンです。

ブータンは2004年に全国的なたばこ法を導入し、2005年には公共の場での喫煙を完全に禁止しました。さらに驚きなのは、2010年にたばこの販売と流通そのものを違法にしたことです。世界で初めて、国全体でたばこを禁じた国となったのです。

もちろん、すべての国民が全く吸っていないわけではありません。密輸などによる例外もありますが、原則として国内ではたばこを手に入れることすら非常に困難です。違反すれば厳しい罰則があり、最悪の場合、国外追放や長期の禁錮刑になることもあります。

この厳しい政策の背景には、ブータンの国是である「国民総幸福量(GNH)」の考え方があります。経済成長よりも、国民の心の豊かさや健康を重視するこの国では、たばこは幸福の妨げとされています。仏教の教えにもとづき、命を大切にし、欲を抑える生き方が重んじられているのも、禁煙政策が根付いた理由の一つです。

今やブータンは、健康と精神の平和を守る象徴的な国として、世界から注目されています。たばこのない社会が本当に可能なのか――その答えを、この小さな山岳国が静かに示しているのです。

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