なぜイギリスの公用語はフランス語だったのか?
今から約950年前、イングランドに大きな変化が起こりました。1066年、ノルマンディー公ウィリアムがイングランドを征服し、ノルマン朝が誕生したのです。この出来事は、イギリスの言語に大きな影響を与えました。
ノルマン人はフランス語を話し、統治者層として英語の上位に立ちました。そのため、宮廷や裁判所、行政の場ではフランス語が公用語として使われるようになりました。公式の文書はほとんどがフランス語で書かれ、英語は「下層階級の言葉」と見なされるようになったのです。しかし、庶民の多くは昔ながらに英語を話し続けました。日常会話や地域のやり取りでは、英語が生き続けていたのです。このため、当時のイングランドでは「話し言葉は英語、書き言葉はフランス語」という、二重の言語構造が生まれました。
やがて時間とともに、フランス語の影響を受けた新しい英語——中世英語——が姿を現します。多くのフランス語から取り入れた語彙が、現代の英語にも色濃く残っています。たとえば、「beef(牛肉)」や「justice(正義)」といった言葉は、もともとフランス語が起源です。
結局、イギリスの公用語が長期間フランス語になったのは、征服による政治的変化の結果。でも、人々のくちびるから消えなかった英語は、やがて再び勢いを取り戻していったのです。
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