本厚木駅の1日平均乗車人員は、直近の2023年度データで125,500人前後(小田急電鉄発表)を推移しています。かつては小田急線内でも新宿、町田、代々木上原に次ぐトップクラスの利用客数を誇り、単一路線の駅としては異例の活況を呈していました。コロナ禍を経てテレワークが浸透し、一時期は数字を落としたものの、厚木市中心部の再開発や交通利便性の再評価によって、現在は力強い回復基調にあります。

「県央の雄」として君臨し続ける駅の特異な立ち位置

本厚木駅の乗車人員を語る上で欠かせないのが、この駅が単なる「通過点」ではなく、明確な「目的地」として機能している点です。多くの郊外駅が都心へ向かう寝床としての「ベッドタウン」の役割に特化する中、本厚木は県央エリアにおける経済・商業の心臓部として独自の生態系を築き上げました。

かつて15万人を優に超えていた乗車人員の背景には、駅周辺に集積するソニーや日産自動車といった世界的企業の巨大なR&D拠点、そして厚木市内に点在する複数の大学キャンパスへの通学需要があります。つまり、朝のラッシュ時に新宿方面へ向かう流れと、逆に本厚木で下車してバスに乗り換える逆方向の流れが、高い次元で拮抗しているのです。この「双方向の流動」こそが、本厚木駅の数字を下支えする強固な岩盤となっています。

しかし、近年の動向は一筋縄ではいきません。海老名駅周辺の爆発的な発展、特に大型商業施設の乱立や相鉄線・JR直通線の開通は、隣接駅としての本厚木に小さくない影響を与えました。利用客の「分散」というフェーズに入った今、本厚木は単なるボリューム勝負ではなく、その質的な変化に直面していると言えるでしょう。

乗車人員の推移に見る、構造的な変化と「海老名」との競合

統計を詳細に紐解くと、興味深い事実が浮かび上がります。2010年代中盤まで、本厚木駅は小田急線内で不動の「乗降人員15万人超え」を維持していました。しかし、2019年以降のパンデミックは、この盤石だった数字に冷や水を浴びせます。製造業の拠点が多いため、現場への出勤がゼロになることはありませんでしたが、事務職や研究職のハイブリッドワーク化により、定期券利用者の割合が目に見えて減少したのです。

さらに、ライバル海老名駅の猛追は無視できないレベルに達しています。小田急・相鉄・JRの3路線が交差する海老名に対し、小田急1本で勝負する本厚木は、広域からの集客において苦戦を強いられているように見えます。しかし、不思議なことに本厚木の「底力」は衰えていません。

その理由は、居住エリアとしての圧倒的なコストパフォーマンスにあります。LIFULL HOME'Sの「借りて住みたい街ランキング」で、本厚木が連年首都圏1位を獲得している事実は、乗車人員の質が「通学・通勤」から「定住者の日常利用」へとシフトしていることを示唆しています。一時的なイベントや買い物客による浮動票ではなく、生活に根ざした安定的な利用層が、この12万人という巨大な数字を支える新たな主役となっているのです。

2020年代後半、本厚木駅のポテンシャルがもたらす実利

乗車人員の多さは、単純に「混雑して不快」というネガティブな側面だけを意味しません。ビジネスの観点から見れば、これだけの人間が毎日確実に移動する場所には、莫大な商機が転がっています。本厚木駅周辺の飲食店、とりわけ「シロコロ・ホルモン」に代表される独特の食文化や、駅直結のミロードといった商業施設が活力を保ち続けているのは、この安定した「人流」という名のインフラがあるからです。

不動産投資や住宅購入の視点でも、乗車人員の回復傾向はプラスのシグナルです。駅の北口および南口で進む大規模な再開発プロジェクトは、さらなる高層マンションの建設を呼び込み、これまで以上に「職住近接」を求める現役世代を取り込もうとしています。

また、小田急電鉄が展開するロマンスカーの停車戦略も、本厚木の優位性を後押ししています。新宿まで約45分という距離感で、確実に座って移動できる環境が整っていることは、テレワークを併用しながら都心へ通う層にとって、依然として強力な選択肢であり続けています。乗車人員の推移は、まさにこの街の「生存戦略」が成功しているかどうかを測る、最も残酷で正直なバロメーターなのです。

本厚木駅の乗車人員に関する注意点と専門家のアドバイス

本厚木駅の統計データを読み解く際、「乗車人員」と「乗降人員」の混同には注意が必要です。多くの自治体資料では片道のみの「乗車人員」が記載されますが、駅の混雑度や市場規模を測る際は、その約2倍となる「乗降人員」で語られることが一般的です。数値を比較する際は、どちらの定義に基づいているか必ず確認しましょう。

また、不動産投資やビジネス進出を検討している方へのアドバイスとして、「平日と休日の流動性の違い」に注目することをお勧めします。本厚木は厚木市役所などの行政機能や企業の事業所が集積する「職」の側面と、大規模な商業施設が並ぶ「商」の側面を併せ持っています。データ上の乗車人員は安定していますが、時間帯によってターゲット層が劇的に変化するため、現地調査は必須と言えます。小田急線内でも屈指の運行本数を誇るロマンスカーの停車駅であることも、数字以上の利便性とブランド価値を支える重要なファクターです。

よくある質問(FAQ)

Q1:近隣の海老名駅と比較して乗車人員はどう推移していますか?

かつては本厚木駅が圧倒的な差をつけていましたが、近年の海老名駅周辺の再開発(ららぽーと海老名やタワーマンション群の建設)により、その差は急速に縮まっています。しかし、本厚木駅は「始発列車の設定」や「都心への着席ニーズ」において依然として独自の優位性を保っており、根強い居住人気を誇ります。

Q2:コロナ禍を経て、乗車人員は完全に回復しましたか?

2020年から2021年にかけてはテレワークの普及により大幅な減少が見られましたが、2023年以降はV字回復の傾向にあります。完全なコロナ前水準には届かないものの、駅周辺の再開発計画や新規マンションの供給により、居住人口自体が増加しているため、今後も底堅い推移が予想されます。

Q3:本厚木駅の混雑が最も激しい時間帯はいつですか?

平日の午前7時台から8時台前半がピークとなります。この時間帯は新宿方面への通勤・通学客が集中します。一方で、本厚木駅は「始発駅」としての機能を持つため、急行や各駅停車を選べば座って通勤できる可能性が高いのが大きなメリットです。

編集部の見解

本厚木駅の乗車人員が長年高い水準を維持している理由は、単なる交通の要所である以上に、「生活完結型の街」としての完成度の高さにあります。都心へ行かずとも駅周辺で全ての用が足りる利便性は、これからの多極化するライフスタイルにおいて最大の武器となるでしょう。海老名との競合も、エリア全体の価値を高める「相乗効果」として機能しており、今後も県央地域の中心地としての地位が揺らぐことはなさそうです。