終末期に頻脈が起こる理由

人が亡くなる前、なぜか心拍数が高くなる——これは多くの人が疑問に思うことでしょう。医学的には、この現象にはいくつかの背景があります。脱水貧血が主な原因の一つです。

終末期になると、体の機能が次第に衰え、水分や食事の摂取が難しくなります。嚥下(えんげ)が困難になることで、自然と水分量が減り、体は脱水状態に陥りやすくなります。また、腎機能の低下により尿の生成が悪くなるため、体内の水分バランスが崩れることも少なくありません。

こうした状態になると、体はそれを補おうとします。血液量が減ると、心臓は同じ量の酸素と栄養を全身に運ぶために、より速く動かざるを得ません。その結果、心拍数が上昇し、150〜160拍/分という頻脈になることがあるのです。

さらに、がんの進行や慢性疾患による貧血も、心臓に負担をかけます。酸素を運ぶ赤血球が減ると、体は代償的に心拍を上げて酸素供給を維持しようとするのです。

このような変化は、必ずしも苦痛を意味するわけではありません。むしろ、体が最後までバランスを保とうとしている自然な反応とも言えるでしょう。家族や介護者にとっては不安な光景かもしれませんが、本人の症状に合わせた緩和ケアがあれば、穏やかな最期を迎える支えになります。

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