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世界を見渡したとき、婚姻時に夫婦がそれぞれ従来の姓を維持する「夫婦別姓」や、同姓・別姓のどちらでも自由に選べる「選択的夫婦別姓」を採用している国は、もはや大半を占めています。結論から言えば、中国や韓国などのアジア諸国をはじめ、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなど、主要なOECD(経済協力開発機構)加盟国のほぼすべてで別姓が法的に認められています。現在、法律で「夫婦は必ず同じ姓にしなければならない」と法律で一律に義務付けている先進国は、世界の中で日本だけと言っても過言ではありません。
数字とデータで可視化する世界の「姓」にまつわる現状
国際比較のデータは、現代社会における家族観の劇的な変化を如実に物語っています。法務省の調査や比較法学の知見によれば、OECD加盟38カ国において、法律で夫婦同姓を強制している国は日本しか存在しません。かつてはヨーロッパの多くの国でも伝統的に夫婦同姓が法律で定められていましたが、1970年代から1990年代にかけて劇的な法改正の波が押し寄せました。
たとえばドイツでは、1993年の民法改正によって選択的夫婦別姓が完全に解禁されました。スイスでも2013年の法改正により、原則として結婚後も各自の姓を保持する形へと舵を切っています。アジア圏に目を移せば、中国や韓国、ベトナムなどの国々では、数百年以上前から歴史的に「夫婦別姓(原則別姓)」が文化定着しており、婚姻による改姓という概念自体が法制度に存在しません。国際連合の女子差別撤廃委員会(CEDAW)からも、日本は法改正を求める勧告を何度も繰り返し受けており、統計上の観点から見ても日本の夫婦同姓義務化はグローバル標準から著しく孤立した状態にあると言えます。
主要各国が採用する多様な選択肢とアプローチの比較
「別姓か同姓か」という二者択一にとどまらず、海外の制度設計はきわめて柔軟かつ多層的です。各国のアプローチは大きく分けて、主に三つの類型に分類できます。
第一に、完全な個人の選択に委ねる「選択的夫婦別姓・同姓制度」です。アメリカやイギリス、ドイツなどがこれにあたります。当事者同士の意思によって、夫の姓にするか、妻の姓にするか、あるいは双方の姓を維持するかを自由に決定できます。さらにドイツなどでは、自らの旧姓と配偶者の姓をハイフンで繋ぐ「結合姓(ダブルネーム)」を選択する道も用意されています。
第二に、伝統や法規範として「原則別姓」を貫く国々です。中国、韓国、ベルギーなどが該当します。これらの国では、結婚しても法的氏名が変わることはなく、個人の身元証明としての姓が厳格に保護されます。
第三に、法的な戸籍上は同姓にしつつも、社会的運用として強力な通称使用や結合姓を法的にバックアップするフランスのような形態です。フランスでは1998年以降、法的氏名とは別に、配偶者の姓を日常的に名乗る権利が法律で明確に担保されています。
安易な制度導入が招く「想定外の混乱」と注意点
多様な制度設計が存在する一方で、夫婦別姓や複雑な姓の選択制度の運用には、事前に予見しておくべき実務的リスクや法的な課題も存在します。制度の切り替えにあたって直面しやすい最大の落とし穴は、「子どもの姓」をめぐる合意形成の難航です。
夫婦が別姓を選択した場合、生まれてくる子どもの姓を「父親の姓」にするか「母親の姓」にするかという判断を、婚姻時あるいは出生時に下さなければなりません。ドイツのように「兄弟姉妹は全員同じ姓に揃えなければならない」という法律上の制約を設けている国がある一方、オーストリアのように兄弟姉妹で異なる姓を名乗ることを許容する国もあります。後者の場合、家庭内で家族の一体感をどのように保つかという情緒的な葛藤が生じたり、学校や行政手続きにおいて親子関係の証明に追加の手間がかかったりする事例が報告されています。
また、国際結婚や海外移住の場面においても注意が必要です。自国の法律と滞在国の法律で姓の扱いが異なる場合、パスポートの表記や銀行口座の開設、ビザの申請時に本人確認の難易度が上がり、思わぬ行政コストやトラブルが発生する危険性を孕んでいます。
意外と知られていない事実
夫婦別姓を選択できる国が多い一方で、「別姓しか認められない国」も存在します。例えば、中国や韓国では伝統的に夫婦別姓が義務付けられており、結婚後も出生時の姓を維持するのが原則です。また、多くの欧米諸国では「同姓・別姓・結合姓(両親の姓を組み合わせる形態)」から自由に選択できます。日本のように法律で法律上の夫婦に単一の姓を義務付けている国は、先進国(OECD加盟国)の中では極めて稀であるという点は、議論において見落とされがちな重要な事実です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 海外で国際結婚した場合、姓はどうなりますか?
相手国の法律に従って別姓を選択できる場合がありますが、日本の戸籍上の姓を変更するには別途手続きが必要です。
Q2. 夫婦別姓にすると子供の姓はどう決まりますか?
選択的夫婦別姓を導入している多くの国では、結婚時または妊娠時に「父親の姓」「母親の姓」「結合姓」のいずれかに統一するルールを定めています。
Q3. 事実婚と選択的夫婦別姓の違いは何ですか?
事実婚は法律上の婚姻関係を結ばない形態ですが、選択的夫婦別姓は法律上の婚姻関係を保ちながら各自の姓を名乗る制度です。
Q4. 別姓にすることで家族の一体感が薄れませんか?
導入済みの国々における意識調査では、姓の統一よりもお互いの尊重や絆の深さが家族の一体感を支えているとする結果が多く報告されています。
多様な選択肢を認め合う社会へ
家族の形や個人の価値観が多様化する現代において、単一の選択肢のみを強制することは個人の尊重やキャリアの継続において課題を生んでいます。伝統を守りたい人が同姓を選び、仕事やアイデンティティの観点から別姓を望む人が別姓を選べる「選択肢の保証」こそが、これからの時代に必要な変化です。法改正を含めた建設的な議論を今こそ進めていくべきではないでしょうか。
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