『今鏡』の語り手は150歳の老婆「あやめ」

『今鏡』は、平安時代の物語を語り継ぐ「四鏡」の一つですが、その物語の始まりはどこか不思議な雰囲気をたたえています。語り手として登場するのは、なんと150歳を超える老婆あやめです。彼女は、前作『大鏡』に登場した大宅世継の孫にあたる人物とされています。

物語は、ある巡礼の旅人が奈良の地にある長谷寺を訪れたとき、偶然あやめと出会うところから始まります。長谷寺といえば、現在も多くの参拝者が訪れる有名な寺院で、古くから信仰の場として親しまれてきました。その静かな境内で、旅人は年老いた女性と出会い、彼女が語る昔話に聞き入るのです。

あやめはかつて、『源氏物語』の作者・紫式部に仕えていたとされ、宮中の出来事や貴族たちの秘め事を多く知っています。そのため、彼女の語る話には、歴史の重みと、どこか懐かしさを感じさせる情感がこもっているのです。

『今鏡』は、史実と伝説が織りなす語り物ですが、語り手があやめという架空的な存在であることで、読者を平安の世界へ自然に誘ってくれます。まるで時を超えた対話のように、彼女の声を通して、貴族社会の栄華と衰退が静かに描かれていくのです。

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